2023/03/30教養・リベラルアーツAI・データサイエンス
さて、皆さんはeスポーツの大会を観戦したことはありますか?
オンラインで行うeスポーツの大会も存在しますが、規模が大きい大会は、そのほとんどが「オフライン」で開催されています。オフライン大会は、大きなドーム会場を丸ごと利用しており、中心付近にいる競技者を観戦者が囲むように配置されています。その会場の雰囲気を一言で表すと・・・
―「熱狂」です。
競技者が上手なプレイをすると、会場全体が大いに盛り上がります。また、多くの観戦者が応援にかけつけるため、その熱量は相当なものになるのです。
これは、eスポーツの大会をオフラインで開催する理由の一つです。また、多くの人が会場周辺を訪れることになるため、経済的な効果も見込めます。
しかし、他にもeスポーツの大会をオフラインで開催する意外な理由があるのです。
eスポーツはスポーツ競技なので、競技者は「公平な条件」でゲームをプレイしていく必要があります。もし、オンラインで大会を開催した場合、次のような問題が起こる可能性があります。
1つ目は機材による影響です。eスポーツは、パソコンなどの機材を利用して競技であるゲームに臨みます。そのため、機材の性能や環境により大きく影響を受ける可能性が大きく、オフラインの会場で同じ機材を用いて競技に臨んでもらう必要があるのです。
2つ目は距離による影響です。競技者同士の距離が離れている状態では、Ping値差が発生します。このPing値差が発生するとなぜ不公平になるのでしょうか?
オンラインゲームでは、常にゲームサーバーに対して、自分自身がゲームをプレイする機材からデータを送受信しています。しかし、そのデータの送受信は瞬間的に行われるわけではなく、ほんの少しだけデータの送受信に遅延を伴うことになります。
Ping値とは、そのデータの送受信の遅延を数値化したゲームサーバーとの応答反応速度のことを指します。以下、データの送受信に遅延が発生することを「Pingが発生する」と表現します。
ゲームサーバーとのデータの送受信には、「光」を利用しています。光の速度は約30万km/sと、とてつもなく速いのですが、日本から海外のサーバーとデータの送受信を行う場合には、1秒未満ではありますが、わずかにデータの送受信において遅延が発生することになり、Pingが生じます。
この解説をする前に、事前知識としてゲームについて解説させていただきます。
ゲームは、パラパラ漫画のように画像を連続で切り替えることにより、滑らかな映像を出力しています。具体的には、1秒間に60枚の画像(切り替えられる画像の枚数は使っている機材に依存する)を連続で切り替えることで滑らかな映像を実現していいます。ここで、画像が別のモノに切り替わるまでの時間を1フレームという風に表現するのですが、上記の場合だと1フレーム=1/60秒ということになります。
次から、Pingが発生するとどういう不平等が生まれるかについての解説を行います。
もし仮に、オンライン大会で、競技者がそれぞれ東京・シカゴでゲーム(1秒間に60枚の画像が切り替わるゲーム)に臨んだとします。ゲームサーバーがシカゴにあるとすると、東京の人から送信されたデータは、東京の競技者の機材→シカゴのゲームサーバー→東京の競技者の機材という動きをすることになります。この時、データの総移動距離と光の速度の関係から、東京の競技者にはデータの送受信の遅延、すなわちPingが発生することになります。
よって、シカゴの競技者にはほぼPingが発生しないのに対して、東京の競技者にはPingが発生し、ゲーム内で4フレーム分の遅延が発生することになります。
強豪プレーヤーは、ゲーム内で1フレーム単位のミスすら許されない世界で戦っているため、この4フレームのずれは致命的な問題になるのです!
そのため、これらの問題を発生させず、競技者であるプロゲーマーに「公平な条件」でゲームに臨んでもらうためにオフラインで大会を開催するのです。
このPingが問題になるのは、ゲームと同様に一瞬一瞬が非常に重要となる世界で問題になります。
代表的な例としては、株の売買です。現在では、高頻度取引(high-frequency trading:HFT)や高速取引(high speed trading:HST)と呼ばれるコンピューターでの自動取引が行われています。株は、ほんの一瞬の間に株価が変動するため、その一瞬を狙って株の売買を行っていく必要があるため、一瞬の遅延で株を買い損ねたり売り損ねたりするなどして、不利益が発生します。
その対策として、株のトレーダーの中には、株の売買が行われている地域の近くに住むことでPingが発生しないようにしている人もいるほどです。
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