学校法人ワオ未来学園 ワオ高等学校

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2023/10/11教養・リベラルアーツイベント

「模倣と創造」をテーマに絵画鑑賞を楽しもう【オモシロイ教科学習 (美術探究編)】

 

教科そのもののおもしろさをワオ高校の教員と一緒に探究する「本当はオモシロイ教科学習~親子で参加できる探究講座」。

 

今回のブログでは、10月4日に実施した美術教員の岡本幸恵先生とMC川本先生でお送りした美術探究「本当はオモシロイ名画」の様子をお届けします。

 

今回のテーマは、「模倣と創造」。

みなさんも、鑑賞をしながら是非、読み進めてみてください。

 

さて、みなさんは、この絵画、ご存じですよね?

 

 

そう、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」です。「世界で最も有名な絵画」と言っても過言ではありません。それだけに、「モナ・リザ」に影響を受けた作品や、オマージュ、パロディなどがたくさん存在しています。

 

例えば、盛期ルネサンスのイタリアの巨匠ラファエロ・サンツィオの「マッダレーナ・ドーニの肖像」や、19世紀のフランスのバルビゾン派を代表するジャン=バティスト・カミーユ・コローの「真珠の女」などが有名です。

 

 

モダンアートでも、「モナ・リザ」は模倣やパロディが作られていて、アンディ・ウォーホルの「モナ・リザ/1人より30人の方が良い,1963」などがよく知られています。

 


フェルナンド・ボテロの「モナ・リザ」


今回、取り上げたのは、フェルナンド・ボテロの「モナ・リザ(Monalisa)」です。ボテロ博物館のサイトで見ることができます。

こちらよりご覧ください。

 

タイトルを観なくても、作品を観れば、明らかに風貌は異なっており、これが「モナ・リザ」のパロディだと分かります。

 

さて、みなさんは、この絵画をご覧になって、どのように感じますか?

 

パロディだと認識できる理由の一つが、特徴的な座り方と手の組み方。

ラファエロ・サンティは「一角獣を抱く貴婦人」や「若い女性の素描」でも同じようなポーズを描いています。

 

また、「久しぶりにあった友達がぽっちゃりしていても、友達だと認識ができる」という感覚とも似ています。

 

「モナ・リザ」は、左右に動いても視線が合うと言われるなど、どことなく神秘的な雰囲気が漂いますよね。そもそもモデルもよく分かっておらず、実は女装したダ・ヴィンチ本人だという説まであります。

それに比べると、フェルナンド・ボテロの「モナ・リザ(Monalisa – Pintura)」は、目線が追ってこないですし、見ていてなんだか安心感がありますよね。

 

それに、ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」に比べると、ちょっと親近感がありませんか?

誰でもないけど誰かに似ている、どこかで見たことがあるような感じ。見たことがあると言えば、ちょっとマツコ・デラックスっぽいような感じもしますね。

 

フェルナンド・ボテロが注目されるきっかけは、「12歳のモナ・リザ」です。

1963年にニューヨークのメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」が展覧されました。そのとき、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のエントランス・ホールでフェルナンド・ボテロの「12歳のモナ・リザ」が展示されたのです。

 

実は、フェルナンド・ボテロは名画のオマージュを数多く描いています。有名な絵のネームバリューを借りて自分の画風を世間に知らしめるという意図があったようです。

 

代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

 

– 「教皇レオ10世(ラファエロにならって)」:ラファエロ・サンティ「レオ10世と二人の枢機卿」のオマージュ

– 「フェルメールの研究」:ヨハネス・フェルメール「少女」のオマージュ

– 「ルーベンスと彼の妻」:ピーテル・パウル・ルーベンス「ルーベンスとイザベラ・ブラント」のオマージュ

– 「草上の昼食」:エドゥアール・マネ「草上の昼食」のオマージュ

– 連作「ボナールへのオマージュ」:ピエール・ボナール「浴槽」

– 「アロフ・ド・ヴィニャンクール(カラヴァッジョにならって)」:ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ「アロフ・ド・ヴィニャクールと小姓の肖像」のオマージュ

– 「アルノルフィーニ夫婦(ファン・エイクにならって)」:ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻像」のオマージュ

– 連作「ウルビーノ公夫妻の肖像(ピエロ・デラ・フランチェスカにならって)」:ピエロ・デラ・フランチェスカ「ウルビーノ公夫妻像」

 

他にも多くのオマージュがあります。

 

最大の特徴は、すべてがふくよかに膨らんだ形で描かれていることです。

フェルナンド・ボテロは彫刻も手掛けていますが、それらも同様にぽっちゃりした造形になっています。

そのボリューム感には官能、ユーモアやアイロニーなど複雑な意味合いが含まれています。それらが、観る人のさまざまな感覚に力強く訴えかけてくることが、世界中で注目され続ける理由です。

 

アートの世界では、「まず模写から」ということが言われます。

実際に書いてみることで、技術的なことはもちろん、作者の意図がよくわかるからだとか。

そこから、先行する作品に対するオマージュや、インスピレーションを受けての創造、あるいはパロディの作品が生まれることは、非常に一般的なことで、「模倣からの創造」と言っていいでしょう。

 


天野喜孝「Wind and Thunder Gods 3」


ファイナルファンタジー・シリーズのキャラクターデザインなどで知られる、現代ファンタジーアートの巨匠・天野喜孝氏の連作「Wind and Thunder Gods」の3作目。非常にスピード感、躍動感に溢れる作品です。

こちらからご覧になれます。

 

左のキャラクターは、天野氏がタツノコプロ所属時代に手掛けた「科学忍者隊ガッチャマン」シリーズの主人公・大鷲のケンをモチーフにしています。

 

美麗かつ幻想的な作風で知られ、ファイナルファンタジーのほか、多くのファンタジー小説のイラストも手掛けられている天野氏ですが、タツノコプロ時代の最大の仕事は、ギャグアニメのタイムボカン・シリーズのキャラクターデザインでしょう。

 

さて、キャラクターが画面両脇に対峙するように配置された独特の構図は、「風神雷神図」から取られたものだということは、すぐにお分かりになるでしょう。連作の第2作「Wind and Thunder Gods 2」では、より直接的にそれを伺うことができます。

 

では、風神雷神図を見ていきましょう。

 

 

酒井抱一の「風神雷神図」です。

文政4年(1821年)頃の作とされ、2曲1双の屏風です。現在、出光美術館に所蔵されています。

中央が大きく空いた独特の構図は、天野氏の作品にも共通のものです。この構図が、「風神雷神図」の最大の特徴とも言えます。

 

天野氏の作品と比較すると、躍動感や流麗さという点が、天野氏の作品の大きな特徴となっていることが分かります。

 

 

「琳派」発展の立役者、尾形光琳の「風神雷神図」です(「琳派」は尾形光琳の名に由来して、後世つけられた呼び名)。

こちらも2曲1双の屏風で、東京国立博物館所蔵です。

 

正確な制作年代はわかりませんが、18世紀初めごろとされています。

先ほどの酒井抱一は「琳派」の後継者の一人です。比べると、この2作品は非常によく似ていますが、あくまでも模写であり、トレースとまではいかない関係にあるということが分かります。

酒井抱一は、尾形光琳の「風神雷神図」の実物ではなく、模写をもとにさらに模写したと言われています。

 

この「風神雷神図」も非常に有名ですが、これも原点ではありません。さらにさかのぼることができます。

 

 

「琳派」の始祖の一人・俵屋宗達の最高傑作とも言われる「風神雷神図」です。

これも2曲1双の屏風で、建仁寺の所有で、京都国立博物館に寄託されています。

 

風神雷神は日本画に限らず、モチーフとしては古くからあり、よく一対のものとして扱われています。

鎌倉時代に作られた三十三間堂の木造風神・雷神像や、神奈川県の長谷寺所蔵の「長谷寺縁起絵巻」などの所謂「天神縁起」の絵巻などが好例です。

 

しかし、俵屋宗達の「風神雷神図」が特徴的なのは、風神と雷神が極端に両端に配置され、真ん中が地のみで空いているという、先ほどから指摘している、この独特の構図です。

 

この構図は、寺院の中に置く屏風という性質から、おかれた空間の中での風神雷神の躍動感を目的に考えられたものと言われています。

 

尾形光琳の「風神雷神図」と比較すると、かなり細かいところまで一致していることが分かります。

トレースとまではいかなくとも、詳細な研究に基づいて、尾形光琳が俵屋宗達を模写したことが分かります。

ちなみに、酒井抱一は、この俵屋宗達の「風神雷神図」の存在は知らなかったのではないかと言われています。

 

この「風神雷神図」には、先ほどの「モナ・リザ」の一連のオマージュとは異なり、明確に一派を継承するという目的のために、いかにその構図や技法、精神を自分のものにするかという意図がうかがえました。

 

今回、「模倣と創造」をテーマに、絵画を観ていきましたが、いかがでしたでしょうか。

模倣からの創造という点は同じでも、その創造の方向性や模倣の目的が全く違うと、絵画から伝わるメッセージも違うことが興味深いですね。

 

▼今回ご紹介したイベント情報はコチラ▼

ワオ!な先生による本当はオモシロイ教科学習 親子で参加できる探究講座

毎週水曜日 18:00~19:00(オンライン)

 

 

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