2023/07/24教養・リベラルアーツイベント
ワオ高校には、「哲学探究」というオリジナル科目があります。
哲学と聞くと、少し難しそうなイメージがあると思いますが、ワオ高校の哲学はいわゆる学問としての「哲学」ではなく、「哲学的思考」を身に付けることを大切にしています。
7月8日に実施したオープンスクール第1部では、この「哲学探究」の学びを体験できる「青春10代しゃべり場~アバターで本音対話~」を開催しました。今回のブログでは、このプログラムでどのような学びの体験があったかを詳しくご紹介します!
なかなか答えを出せない問題に対して、みんなの考えや体験をコメントしあい、ビフォー・アフターで賛成か反対か意見の移り変わりを楽しむ哲学体験プログラムです。
司会者はなんとアバター!
「へーげ」さんと「もな」さんの司会で、スマホを使ってテキストで返答する形式で議論が行われました。
参加者はアバターで顔が分からず、テキストでコミュニケーションするということで、対面ではなかなか言いにくいことも発言できたようです。ちなみに、オープンスクールではこのような形式で行っていますが、実際のワオ高校の授業では皆さんカメラをONにして哲学的対話を楽しんでいます。
今回の議題は・・・
「髪型強制はパワハラか?」
校則での髪型の規制というのは多くの学校で見られることですので、身近な話題ですよね。
一体どのような議論の場になったのでしょうか。
(このブログを読まれている方も、是非一緒に考えてみてください!)
賛成派の意見
「ある程度の規律があることで安心できることがある」
「髪を大切にするということを学べる」
これらの意見の背景には、校則はやみくもにあるわけではなく、何らかの形で学生を守るという意味があるのでは?という考えがあるように見えます。
ただ、本音で賛成と答えた方の意見はこの2つだけでしたので、やはり、髪型規制の校則は行き過ぎた拘束だと考えている人が多いのかもしれませんね。
反対派の意見
一方、反対派の意見は高速で次々と出てきました。
「好きな自分や新しい自分になれるから規制しない方がいい」
「学習さえできれば、自由でいい。規制のない方が楽しいしモチベーションも上がる」
「髪型を自由にすると個性を表現でき、別のネガティブな方法で表現する必要がなくなる」
「髪型も一つの個性。髪型校則はそれを否定する」
髪型を自由な個性の発露だと捉え、髪型規制は個性の否定、とする意見が多く見られました。
「髪型で人間性を決めたり縛る行為自体が古い。人に迷惑かけなければ髪型の校則は必要ない」
「勉強や運動に邪魔になるかどうかは自分で判断できる。社会に出たとき必要なものは徐々に学んでいくもの。校則により縛られることで学べるものではない」
そもそも校則が何のために存在しているのか、という点に疑問を抱くタイプの反対意見も見られました。
賛成派・反対派それぞれの意見を聞いた上で、1回目の決選投票を実施。結果は2対10で反対派が勝利しました。
多数決であれば、この時点で「髪型規制の校則は廃止しよう」となるのですが、それではあまりにも話が単純です。双方の意見を聞いただけでは、十分に吟味したとはいえません。
そこで、後半は賛成派の人は髪型規制の校則に反対する意見、反対派の人は賛成の意見を考えることにしました。本音とは逆の意見を考えるわけですから、「なぜ」やメリット・デメリットを論理的に説明する必要が出てきます。
まずは本音が反対派だった人の「賛成」の意見
これは、金銭的な負担に注目した意見ですが、視点を変えれば、家庭の所得によって格差が生じる可能性を示唆していると言えます。
「個性の弱肉強食が起きる可能性がある」
「髪型によるいじめや差別を防ぐため」
これらは、競争の激化などによって、個性の格差が生まれ、差別などにつながることへの懸念を述べていると言えます。
「普段は自由な髪型でよいでしょう。ただし、いつでも冠婚葬祭や進学などの面接に行けるよう、日頃の準備とか学校生活をきちんとしておきましょう。」
「パーマでアフロヘアにした人が一番前の席に座っていたら、黒板が見えない」
賛成でも反対でもない意見や、髪型による実害という面白い意見も出ました。
次に、本音は賛成派だった人の「反対」意見。
全体を規制するのではなく、個別対応でいいという意見です。
元々賛成派の人は二人だったこともあり、「反対」の意見はこれだけでした。
これらの意見を聞いた上で、2回目の賛成反対の決選投票を行いました。
意見を変えた人はいましたが、投票結果は2対10で変わりませんでした。
最後に、司会のへーげさんが、なぜこのような議論を行ったのかの種明かしをしました。
それが哲学者ヘーゲルの「弁証法」です。
「弁証法」とは、「ある『命題(テーゼ)』と、『対立関係にある命題(アンチテーゼ)』を統合し、『より高い次元の命題(ジンテーゼ)』を導き出す『止揚(アウフヘーベン)』の考え方を土台とした思考法です。
ここで弁証法の練習問題をやってみました。
①「パンが食べたい」という人と、「ハンバーグが食べたい」という人がいた時。
②「飲み会でお酒が飲みたい」という人が、「車で来たから運転して帰らないといけない」という時。
さて、このシチュエーション、弁証法で解決策を考えればどうなるでしょう?
ちょっと考えてみてください。
参加者からは、①だとハンバーガーにする、②だとノンアルコールビールにする、運転代行を頼む、などの意見がでました。ちゃんと「アウフヘーベン」できています。
これを踏まえて、弁証法で、髪型規制の校則問題の解決策を考えてみました。
「髪型は自由だが、人に迷惑かからならないように自分で考えて注意を払う。」
「相手のことを思いやり自己判断してもらう」
「自分の個性と、周囲の歓声の両方を考えて自分を大切にしつつ周囲を思いやりながら自分で決める。」
賛成反対ではなく、自分で判断することを重視する意見が多く出ました。規制が学校によるものではなく自己規制に置き換わることで、自由と規制が両立できています。
でも、、、今この記事を読んでくれている皆さんは、気づきましたか?
実は髪型規制の議論内でも、一部で自然と弁証法が実践されていたのです!
本音が反対派だった人が「賛成」側にまわったときに出た、「普段は自由な髪型でよいでしょう。ただし、いつでも冠婚葬祭や進学などの面接に行けるよう、日頃の準備とか学校生活をきちんとしておきましょう。」という意見は、実はアウフヘーベンされたものでした!
今回のプログラムを通じて哲学的思考に触れることができたことは、参加者の皆さんにとってきっと実りある時間になったと思います。
今後もワオ高校のオリジナル科目を体験できるイベントを開催していきます。
耳だけ参加でもOK!是非とも、お気軽にご参加ください。
▶ワオ高校 イベント情報はこちら
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